オレンジの電車と蚊。

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地下鉄のオレンジ色の線には、黄色い蚊が1年中車両に滞在している。これは、車庫が湿気の多い場所でボウフラが発生しやすいから、らしい。知らんけど。

高校1年生の頃、このオレンジ色線を利用していた。かきむしりたくなるような高校生活。独特の体育会系高校の教員は校内全域で神、3年さんは神の使い、2年さんは近所のこわくてうるさいおばちゃんみたいなイメージだった。

朝は掃除。

掃除をするために、朝早く自転車に乗って学校に通う。朝一番、先生はいないときのほうが多い。だけど、カーテンが閉められている先生の部屋に「おはようございます」と頭を下げてから、部室に向かう。

そこで寝坊やら、体調不良やらで朝の掃除に来てない奴の愚痴大会のオンパレード。休むときっと自分も言われるんだろう、そういうのが当たり前の空気感。みんななんのために部活やってたんだろう。

掃除が終われば、1限から4限まで授業。早弁が美徳で、お昼は部活の練習。5限寝て、6限も寝る。気づいたらまた部活。電子音の秒針と、マネージャーの掛け声はたまに夢に出てくる。

1年生の春、水泳で入ったのにもかかわらず交通事故で泳ぐこともできず、なんのために存在しているのかよくわからない空気感、いっそきえたいとおもう、気まずさ。やめると授業の単位がなくなるから、やめるという選択肢はない。

「ごめんなさい」と1年間で何度、何人に言ったんだろう。謝罪はすればするほどわたし個人と一緒に価値が下がっていく。何回自分の人生が終わったと思ったんだろう。気がつくと、何もする気がおきなくて起きてもDSのゼルダとモバゲーしかしない人生になりはてていた。

 

わたし、このまますげークズな人生で一生を終えるのか。

 

結局学校に行けなくなって、それでやめた。

転校という措置を取らせてもらえて、女子校に転校した。逃げた。

彼女たちに「高校やめた。今まで迷惑かけてごめん」と最後の謝罪メールをおくった。

1人以外、返事はなかった。

だけど、「応援用うちわが見つからない、家に持って帰っていないか?」という疑いのメールは1ヶ月後複数件きた。わたしに預けるはずがないのに。

その日は、卒業旅行で北海道。新しい同級生と。ケータイの電源を落としたとき、見えない気持ち悪い縁が切れたとおもって清々しかった。

(後日確認したら結局、誰かの家にあったらしい。)

 

*** 

 

今日、何年かぶりにオレンジ色の地下鉄に乗った。

東京へ引っ越すための必要な書類を取りに行くために。蚊はあたりまえのようにまだ車両に滞在していた。振り払ったら、噛まれなかった。